重症筋無力症の胸腺切除の適応(メモ)
- 胸腺腫を合併しているMGは切除の絶対適応。
- 非胸腺腫MGでは胸腺摘除は十分な根拠なし。
- 胸腺摘除が有効な因子として、胸腺過形成・異所性胸腺組織なし・発症から摘除までの期間が短い・若年者であること。
- MuSK抗体陽性には有効性あるとは言えない。
MuSK抗体陽性の重症筋無力症のまとめ
重症筋無力症は神経筋接合部において、アセチルコリン受容体(AChR)に対する自己抗体が存在するため、神経筋伝達障害が見られる自己免疫疾患である。
しかしMG患者のうち15%程度はAChR抗体が陰性で、そのうちの一部がMuSK抗体陽性である。
AChR抗体やMuSK抗体陰性のものは"double seronegative MG(DS-MG)"とされるが、これは一部はAChR抗体やMuSK抗体が測定感度以下のものであるとされている。AChR抗体やMusk抗体以外の新たな自己抗体としてLrp4抗体などが報告されているが、その病的意義は詳細不明。
いかにMusk抗体陽性のMGの特徴をまとめる。
- 胸腺腫の合併を認めない
MuSK-MGではほぼ全例に胸腺腫の合併を認めない。
さらにMuSK-MG患者より摘出された胸腺の病理像はほぼ正常であったとの報告があるため、胸腺摘除術についても有効性があるとはいえず、摘除しないのが一般的である。
- 抗コリンエステラーゼ薬が効きにくい
MuSK-MG例では一般に抗コリンエステラーゼ薬への反応がAChR-MGに比べて乏しい。MuSK-MG患者ではエドロホニウム試験の陽性率は50%程度で明らかにAChR-MGよりも低く、さらに検査中の症状増悪、唾液分泌亢進や消化器症状などのコリン作動性の副作用を呈する例も多く見られた。
- 血漿交換の方法が異なる
血液浄化療法には、免疫吸着・単純血漿交換・二重膜濾過血漿交換の3種類がある。抗AChR抗体は免疫吸着法で、MuSK抗体は単純血漿交換を行う。
免疫吸着法で用いるイソムーバTR-350は免疫グロブリンのサブタイプIgG1とIgG3を選択的に吸着する。
抗AChR抗体はIgG1であるため免疫吸着法で除去可能だが、抗MuSK抗体はIgG4であるため免疫吸着法での除去は不可能。したがって単純血漿交換を用いる。
- 難治性の筋萎縮を呈する場合がある
機序は不明だが、MuSK-MGは球症状を呈し、顔面の難治性の筋萎縮を呈する一群がある。早期の大量ステロイド療法や免疫抑制薬の積極的な治療により抑制できる可能性がある。
上記内容について後日追記予定(2019.10.3 11:50 追記)
重症筋無力症のガイドライン
https://www.neurology-jp.org/guidelinem/pdf/mg_02.pdf
循環器③ 問題解説
これは不適切な問題かもしれない
答えは④「ARではⅣ音を聴取する」です
①MSではⅠ音が減弱する
誤り。
MSではⅠ音は増強する。
Ⅰ音は
「心室収縮力の増大、M・T弁の狭窄(石灰化など)」で増大
「心室収縮力の低下、M・T弁の閉鎖不全」で減弱
これと対照的に
Ⅱ音は
「高血圧、肺高血圧、A・P弁の閉鎖不全」で増大
「低血圧、A・P弁の狭窄」で減弱
A・P弁の「閉鎖不全で増大」、「狭窄で減弱」の理由は
心室内と大動脈の圧較差が、心房心室間とものよりもはるかに大きいため、弁の性状(Ⅰ音増大は主に弁の石灰化で生じる)に起因せず、心室内と大動脈の圧較差で生じる音が、Ⅱ音の増大・減弱に寄与していると考えられているためである
まあⅠ音覚えてその逆と理解すれば国試は解ける
【類題】
MSの聴診所見はどれか(103D57)
答え f
MSの聴診は
- Ⅰ音が増強
- OS(opening snap)
- 拡張期ランブル
を生じているものを選ぶ
eはおそらくPRかAR
②MRでは左室肥大を呈しやすい
誤り(不適切な恐れ)。
MRでは左室拡大を呈しやすい。
基本的に
- 容量負荷 ➡︎ 拡大
- 圧負荷 ➡︎ 肥大
と考えれる(心房では容量・圧負荷ともに拡大)
MRでは
- 左室に対して容量負荷
- 左房に対して容量・圧負荷
肺うっ血をきたし肺高血圧をきたせば
- 右室に対して容量・圧負荷
引き続いて
- 右房に対して容量負荷
が生じる(以下病みえのイラスト参照)
したがって
左室拡大、左房拡大、右室肥大・拡大、右房拡大
が生じる
この選択肢で意見のある方はDMください
【類題】
答え b,c
a.Ⅰ音は減弱する
d.汎収縮期雑音である
e.ARで生じる機能的MSである
③ ASでは病的分裂をきたしやすい
誤り。
ASでは奇異性分裂をきたす。
Ⅱ音は通常
Ⅱa、Ⅱpの順であるが
A弁の閉鎖が遅れる(AS、LBBB)ことでこの順番が逆転する場合がある
それを奇異性分裂という
ASでは右室の収縮が遅れるため(遅脈)、奇異性分裂を生じる
病的分裂とはⅡaとⅡpが異常に離れることである
これはA弁の閉鎖が早まる(MR、VSD)、あるいはP弁の閉鎖が遅れる(PS、RBBB)ことで生じる。
【類題】
答え d
a.弁膜疾患ではASが最も突然死の可能性が高い。
b.心筋肥大のため酸素要求量が上昇し、また大動脈に流れる血流が低下し、冠血流量が低下するめダブルパンチで心筋虚血状態に陥りやすい 。そのため狭心症症状が出る。
c.左室圧負荷のため。
e.動脈硬化、二尖弁、リウマチ熱の後遺症で生じる。高齢者が増加しているためASの患者は増加傾向。
④ARではⅣ音を聴取する
正解。
Ⅳ音は左室の圧負荷で生じると考えられる。
ARでは
- 左室容量負荷 ➡︎ 左室拡大
- 大動脈容量負荷 ➡︎ 収縮期血圧上昇
が生じ、増加した血流を一気に押し出す必要があるため、その結果
- 左室圧負荷 ➡︎ 左室肥大
をきたす。
そのためⅣ音を聴取する。
ASでも左室肥大を生じるためⅣ音を聴取する。
【類題】
答え c,e
a,生じない。奇脈は心タンポナーデや収縮性心膜炎で生じる。
b,Ⅱ音が亢進する。
d,固定性分裂はASDである。ARで分裂は特に変化しない。
循環器② 解説
20代の女性。主訴は突然の動悸。気管支喘息で治療中。意識清明、脈拍・血圧共に正常。心電図を示す。
対応として適切でないものを選べ。
答えは③の「ATP投与」です
まず、訂正ですが
「脈拍・血圧共に正常」
なわけないですね、脈拍は 148/分 です。
この問題は「PSVTの治療の注意点」
まずPSVTは発作性上室頻拍のことで、今回の症例は特にAVNRTを示す。
PSVTではAVNRTとAVRTがメイン
AVNRT
AV(房室)N(node : 結節)RT(リエントリー頻拍)
でわかる通り、房室結節をクルクルと回転する頻拍である。
房室結節にはもともと速い伝導路と遅い伝導路があり、通常は速い伝導路を伝って心室に刺激が伝わる。
しかし上手いタイミングで期外収縮が生じ、速い伝導路の不応期に刺激が房室結節に到達した場合、その刺激は遅い伝導路を走る。
その刺激が心室だけに伝わらず、不応期を脱した速い伝導路を逆行してしまう場合があり、その時リエントリーが形成される。
これがAVNRTである。
AVNRTの心電図は
- narrow QRS
- RR間隔は一定
- P波はQRSに埋もれる
を呈する
AVRT
AVRTは房室リエントリー頻拍のこと。
WPW症候群などの副伝導路がある場合に、期外収縮がきっかけで生じるリエントリー頻拍である。
期外収縮の刺激が房室結節を伝わり、副伝導路を逆行し、そのまま房室結節に刺激が戻ってリエントリーが形成される。
これを順行性(正方向性)リエントリー頻拍という。
この場合はnarrowQRSだが、この経路を逆行する場合もあり、その場合はwide QRSを呈する。
心電図の特徴は(順行性なら)
- narrow QRS
- RR間隔は一定
- 逆行性のP波が見られる
となる
問題解説(囚人の解き方)
気管支喘息持ちであることを第一に印象付ける。
ぱっと見PSVTとわかり、AVNRTかAVRTかを趣味として調べる。
AVNRTとわかる。
喘息であることを忘れず、治療を考えると
AVNRTの治療は
Valsalva法、Ca拮抗薬(ベラパミル、ジルチアゼム)、β遮断薬、ATP
などを思い出し
喘息なので
β遮断薬とATPは禁忌であることを考えて
今回の答えは
ATP投与
となる
ATPは急速静注しないと効果が出ないらしい
治験段階で気管支喘息を持っている被験者に副作用が出たとの報告から、禁忌とされている。
詳しい機序は不明(知ってたら誰か教えてください)
循環器① 解説
正しいものを選べ
正解は①「ARでは狭心症の症状がありうる」
ARでは狭心症の症状がありうる
正解。
ARでは拡張期血圧が低下する(逆流により)。
すると冠動脈に流れるはずの血流が心臓内に戻ってしまい、冠血流量が低下する。
したがって狭心症の症状が生じる。
刺激伝導系で伝導速度が最も遅いのは洞結節である
誤り。
最も遅いのは房室結節。
房室結節の伝導速度が遅いおかげで、心房と心室の拍動のタイミングをずらすことができる。
【類題】
答えはd
Ⅱ音は低調な音である
誤り。
Ⅱ音は高調な音。
Ⅰ、Ⅲ、Ⅳ音は低調な音。
【類題】
答えはa
b.臥位で増強する(VR上昇で血流が増えるから)
c.拡張期
d.心尖部領域で聴取される
e.病的でない
AFではⅣ音が聴取される
誤り。
Ⅳ音は心房のatrial kickと考えることができる。
AFでは心房は収縮できず、聴取されない。
【類題】
答えはb.c.d
a.Ⅱ音が心基部で最強
e.心膜ノック音は収縮性心膜炎によくあり、拡張早期に聴取される。