研修医のための知識

元々は医学部6年生・研修医向けの医学ブログでしたが、最近はオプションを利用した資産形成方法を掲載しています。

循環器② 解説

20代の女性。主訴は突然の動悸。気管支喘息で治療中。意識清明、脈拍・血圧共に正常。心電図を示す。

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対応として適切でないものを選べ。

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答えは③の「ATP投与」です


 

 

 

まず、訂正ですが

脈拍・血圧共に正常

なわけないですね、脈拍は 148/分 です。

 

 

この問題は「PSVTの治療の注意点」

まずPSVTは発作性上室頻拍のことで、今回の症例は特にAVNRTを示す。

PSVTではAVNRTAVRTがメイン

 

 

AVNRT

AV(房室)N(node : 結節)RT(リエントリー頻拍)

でわかる通り、房室結節をクルクルと回転する頻拍である。

房室結節にはもともと速い伝導路遅い伝導路があり、通常は速い伝導路を伝って心室に刺激が伝わる。

しかし上手いタイミングで期外収縮が生じ、速い伝導路の不応期に刺激が房室結節に到達した場合、その刺激は遅い伝導路を走る。

その刺激が心室だけに伝わらず、不応期を脱した速い伝導路を逆行してしまう場合があり、その時リエントリーが形成される。

これがAVNRTである。

 

AVNRTの心電図は

  • narrow QRS
  • RR間隔は一定
  • P波はQRSに埋もれる

を呈する

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AVRT

AVRTは房室リエントリー頻拍のこと。

WPW症候群などの副伝導路がある場合に、期外収縮がきっかけで生じるリエントリー頻拍である。

期外収縮の刺激が房室結節を伝わり、副伝導路を逆行し、そのまま房室結節に刺激が戻ってリエントリーが形成される。

これを順行性(正方向性)リエントリー頻拍という。

この場合はnarrowQRSだが、この経路を逆行する場合もあり、その場合はwide QRSを呈する。

 

心電図の特徴は(順行性なら)

  • narrow QRS
  • RR間隔は一定
  • 逆行性のP波が見られる

となる

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問題解説(囚人の解き方)

気管支喘息持ちであることを第一に印象付ける。

ぱっと見PSVTとわかり、AVNRTかAVRTかを趣味として調べる。

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AVNRTとわかる。

 

喘息であることを忘れず、治療を考えると

AVNRTの治療は

Valsalva法、Ca拮抗薬(ベラパミル、ジルチアゼム)、β遮断薬、ATP

などを思い出し

喘息なので

β遮断薬とATPは禁忌であることを考えて

 

今回の答えは

 

ATP投与

 

となる

 

 

ATPは急速静注しないと効果が出ないらしい

治験段階で気管支喘息を持っている被験者に副作用が出たとの報告から、禁忌とされている。

詳しい機序は不明(知ってたら誰か教えてください)