研修医のための知識

元々は医学部6年生・研修医向けの医学ブログでしたが、最近はオプションを利用した資産形成方法を掲載しています。

悪性高熱症でチアノーゼになる理由

悪性高熱症のまとめはこちら

misoramenn.hatenablog.com

 

悪性高熱症では骨格筋細胞が崩壊して

カリウムやCK、ミオグロビンが放出した。

 

ミオグロビンはヘモグロビンと同様に酸素と結合する。

しかし、ミオグロビンはヘモグロビンと違い酸素乖離曲線が大きく左にシフトしている。

 

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そのため、酸化ヘモグロビンから酸素を奪う。

したがって還元ヘモグロビン濃度が上昇し、チアノーゼとなる。

 

悪性高熱症のまとめ

悪性高熱症は悪性高熱症にかかりやすい人がなる病気

 

 

 

概念

悪性高熱症(MH;malignant hyperhermia)の病因は、骨格筋の筋小胞体のリアノジン受容体や電位依存性Caチャネルの変異によるカルシウム代謝異常で、揮発性吸入麻酔薬脱分極性筋弛緩薬によって誘発される麻酔合併症の一つ。

 

完全静脈麻酔(TIVA)の普及により、年々症例数は減ってはきているが、死亡率は10〜15%を推移している。

 

 

病態

本態は骨格筋の異常な代謝亢進といえる。


揮発性吸入麻酔薬により、筋小胞体からのCaによるCa放出機構(いわゆるCa-induced Ca release)を促進させる。

細胞内Ca濃度が異常に上昇して、筋収縮が激しく起こる ➡︎ 代謝亢進

筋収縮にはATPも利用され、さらに代謝亢進によりグリコーゲンの分解も促進される。

ATPはADPに変換され、ADPは解糖系とミトコンドリアでのピルビン酸の酸化も促進させる。

これによりO2とATPとグリコーゲンが枯渇し、CO2と乳酸と熱が産生される。

これが進行すると、筋細胞が崩壊して、カリウムCKミオグロビンが血中へ放出される。

 

 

 

 

症状

初期:咬筋強直、ETCO2の上昇不整脈(原因不明)

中期:アシドーシスチアノーゼ、体温上昇、SpO2低下

後期:筋強直、出血傾向、コーラ様

 

 

診断

国試レベルでは

「吸入麻酔薬と脱分極性筋弛緩薬」

の文字列で診断基準満たした

みたいなとこありますけど正確には以下の図を参照してください。

 

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治療

国試的にはダントロレン・・・。

 

ちゃんというと

1.誘発薬剤の中止

2.純酸素で過換気(骨格筋への酸素投与と増大したCO2の排泄)

3.ダントロレン投与

4.対症療法(冷却、輸液、アシドーシスの補正、高カリウム血症の補正、抗不整脈薬の投与)f

 

 

 

 

悪性高熱症でDICになる理由(熱中症でDICになる理由)

一度書いた記事なのに消えてました。むかつきます。

はてなブログアプリはもう使いません。

 

 

悪性高熱症(MH)というより、熱中症でなる理由を考える。

 

 

熱中症になると、血中で、von Willebrand因子やトモンボモジュリン、エンドトキシン、炎症性サイトカイン、プロカルシトニンなどが増加されると報告されている(1)。

高温と虚血により組織が障害され、壊死細胞から細胞構成成分(DAMPs:damage-associated molecular patterns)が血管内皮細胞やWBCを刺激し、強い炎症のマーチが始まる。

さらに消化管においては腸管粘膜が浮腫・壊死をおこし(慢性的な炎症ではしばしば起こる)、透過性亢進を生じさせ、防御機能が破綻する。そのためBacterial Translocationが発生し、敗血症みたいになり、WBCからさらなるサイトカインが放出され、凝固の異常亢進と凝固因子の枯渇を招き、DICを惹起する。

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詳しくは以下リンク参照

https://www.jbpo.or.jp/med/jb_square/dic/pdf/2nd_vol2_201903.pdf

 

 

 

(1)Tong HS,et al. Inflammation.2014;37;27-34

(2)須賀弘秦,他.バイオメディカル.2008;18:35-42

(3)Sieh SD,et al.Clin Sci.1995;89:261-5

(4)白石振一郎,他.バイオメディカル.2011;21:24-30/

麻酔科 練習問題③ 解説

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誤りを選べ

 

本邦ではセボフルランが最も使用されている

https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjsca/30/3/30_3_342/_pdf

10年前という古い論文で恐縮だが、上記リンクにセボフルランが使用しやすい理由が書かれてある。

抜粋すると

  • 麻酔の導入と覚醒が迅速で、麻酔深度の調節が容易である
  • 循環抑制作用が少ない
  • 自発呼吸下での麻酔導入が可能である
  • 小児症例にも対応できる

 

セボフルランは気道刺激性が低いため、高濃度で吸入することにより、迅速な麻酔導入が可能。また血液/ガス分配係数が低いため、麻酔の導入・覚醒は速やか(本問題で扱うイソフルランよりかは血液/ガス分配係数が高く、覚醒が遅いが)であり、深度調節が容易。

静脈麻酔薬は入眠が得られる投与量と循環抑制を引き起こす投与量が近いため、麻酔導入の際に血圧低下をきたす可能性があるが、吸入麻酔薬であるセボフルランはその作用が少ない。

 

 

イソフルランはセボフルランよりも代謝率が高い

これが誤り

代謝率というのは生体内代謝率のことで、代謝率が低い方が良いとされる(代謝産物が体内に蓄積するため)。

イソフルランはセボフルランよりも代謝率が低い。

逆にセボフルランが他の吸入麻酔薬よりも代謝率が高いことがよく知られている。

 

 

イソフルランはセボフルランよりも遅く覚醒する

イソフルランは血液/ガス分配係数が1.4と、セボフルランの0.65より高い。

したがって覚醒が遅くなる。

 

 

イソフルランはセボフルランよりも気道刺激性が高い

セボフルランは気道刺激性が低いことで知られており、そのため小児などの緩徐導入にも適している。

 

 

イソフルランとセボフルランの違いのまとめの図

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その他の知識

コンパウンドA

二酸化炭素吸収剤とセボフルランが反応してできる物質。

蓄積すると腎障害を引き起こす可能性があるが、有害事象報告がないため意義不明。

 

冠盗血現象

イソフルランには冠血管を拡張させる働きがある。

患者が冠動脈バイパスをしていると、冠血管は拡張するが、バイパス血管は拡張させない。

もしバイパス血管により心筋が栄養されていると、盗血現象により十分な血流が流れない恐れがある。

 

麻酔科 練習問題② 解説

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誤りを選べ

問題①の方はアプリが復旧次第投稿します

 

 

肥満は麻酔の導入が早く、覚醒は遅い

肥満は機能的残気量が減少するので導入は早くなる。

しかし、脂肪組織に吸入麻酔が残るため、覚醒は遅い。

 

新生児の脊髄くも膜下麻酔はL2より尾側で行う

これが誤り

新生児の脊髄下端はL3くらい。

したがってそれより尾側で行う必要がある。

1歳頃に脊髄下端はL1(成人と同じ)になる。

 

 

モルヒネの副作用の嘔気には耐性がつく

「麻酔科」というよりは「緩和ケア」の問題。

モルヒネオピオイドの中で最も嘔気、眠気が強いが、それらは数日以内に耐性を持ち改善することはよく知られた事実。

 

 

オキシコドンは腎機能低下している患者にも使える

これも緩和ケアの問題。

オキシコドンは肝代謝なので使える。

それ以外は腎代謝と覚えておこう。

パラコートに酸素禁忌な理由

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パラコートとは除草剤の成分。

パラコートは細胞内に入るとNADPHなどの還元物質から電子を奪い、パラコートラジカルとなる。

ラジカルが参加されて元のパラコートに戻る際に活性酸素を発生させ、細胞内の核やタンパクを傷害させる。

 

パラコートはNADPHがある限り何度も同じことを繰り返して、活性酸素を発生させる。

すなわち少量でも非常に強い毒性を持つ。

 

パラコートによる細胞障害は細胞レベルでの酸素が重大な発生要因となっているため、パラコート中毒に酸素投与は禁忌なのである。

 

予後不良

 

 

 

おまけ

パラコート中毒の性質

酸素投与禁忌・経皮吸収(基本は経口)・特効薬なし

 

有効な拮抗薬・解毒薬がある中毒まとめ

とりあえず置いときます

まだ追記するかも

 

CO中毒・・・酸素 ➡︎ 高圧酸素療法

  (高圧酸素療法を行う疾患:CO中毒、ガス壊疽、潜水病、網膜動脈閉塞症)

シアン(青酸)中毒・・・亜硝酸アミル、チオ硫酸ナトリウム

麻薬・・・ナロキソン

メタノール・・・エタノール

アセトアミノフェン・・・N-アセチルシステイン

ベンゾジアゼピン系・・・フルマゼニル