研修医のための知識

元々は医学部6年生・研修医向けの医学ブログでしたが、最近はオプションを利用した資産形成方法を掲載しています。

巨赤芽球性貧血に葉酸単独が禁忌な理由

正確にいうと

Vit.B12欠乏もしくは原因が不明な巨赤芽球性貧血に対して葉酸単独投与は禁忌」

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巨赤芽球性貧血は骨髄に巨赤芽球が出現する疾患である。

巨赤芽球性貧血は、Vit.B12欠乏によるものと、葉酸欠乏によるもの、もしくはその両方が原因として考えられ、特にVit.B12欠乏で神経症状が出現したものを亜急性脊髄連合変性症という。

Vit.B12欠乏、あるいは原因が不明な巨赤芽球性貧血に対して、葉酸単独投与は禁忌である。

 

 

Vit.B12の役割として大きく2つある

 

Vit.B12と葉酸の関係は以下の図を参照。活性化された葉酸になるためにVit.B12が酵素として必要なのである。

 

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活性化された葉酸によって、DNAが作られていく。

したがってこの経路が障害されることによりDNAが合成されなくなり、核に比べて細胞質の大きな巨赤芽球が誕生する。

 

また、Vit.B12は以下の図に示す通り、脂肪酸代謝経路にも用いられている。

また、髄鞘脂肪酸で構成されている

そのため脂肪酸代謝経路に異常をきたすと髄鞘形成に障害が起こり、その結果神経症(特に側索と後索)が生じる。

亜急性脊髄連合変性症の詳細な神経障害は別の記事に書きます。

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ここで、巨赤芽球性貧血の原因がVit.B12欠乏であったとする。

この時Vit.B12を補充せず、葉酸のみを投与したとする。

すると葉酸代謝が促進され、よりVit.B12が欠乏していくこととなる(Vit.B12は完全に枯渇しているわけではない)

この結果、ただでさえ少なくなっていたVit.B12が、葉酸代謝経路に用いられることとなり、脂肪酸代謝経路に回すVit.B12がいよいよ無くなっていく

脂肪酸代謝経路の障害は、髄鞘形成障害を引き起こした。

したがって、Vit.B12欠乏による巨赤芽球性貧血に対して、葉酸単独投与を行うと神経症状が悪化する。